2025年6月28日に施行された改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)により、ナイトワーク、特にホストクラブ業界は大きな変革の時を迎えます。
この記事では、法改正によってホストクラブの何が変わり、店舗や利用者にどのような影響があるのか、重要ポイントを分かりやすく解説します。
【風営法改正】ホストクラブはどう変わる?
近年、悪質な「売掛金(ツケ払い)」によるトラブルや、客の恋愛感情を利用した「色恋営業」が深刻な社会問題として注目されました。
今回の法改正は、こうした問題に歯止めをかけるため、ホストクラブの営業形態に深く踏み込んだ内容となっています。
【結論】ホストクラブを直撃する6つの改革
今回の法改正で、特にホストクラブに関連する変更点をまとめると、以下の6つが挙げられます。これまでの業界の「常識」が大きく見直されることになります。
改正ポイント | 具体的な内容(NGになること) |
①色恋営業の禁止 | 恋愛感情につけ込み、高額な飲食を要求する行為 |
②無理な売掛の禁止 | 脅迫や威圧による支払いの要求、売春などを強要する行為 |
③広告・宣伝の規制強化 | 「売上ランキング」「億超えプレイヤー」等の過度な謳い文句の禁止 |
④スカウトバックの禁止 | 売掛金回収のために風俗店等を紹介し、紹介料を受け取る行為 |
⑤無許可営業等の罰則強化 | 無許可営業や名義貸しに対する罰金額の大幅引き上げ |
⑥違反店舗の系列排除 | 1店舗の違反で、グループ全体の営業が5年間禁止される連帯責任 |
それぞれが何を意味するのか、詳しく見ていきましょう。
①色恋営業の禁止
今回の改正で最も大きな特徴の一つが、「色恋営業」を明確に禁止する規定が盛り込まれた点です。
【改正条文のポイント】
▶ 次の行為を接待飲食営業を営む風俗営業者のしてはならない行為(遵守事項)として規定
• 料金に関する虚偽説明
• 客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求
• 客が注文していない飲食等の提供
これにより、以下のようなホストの営業行為は、【明確な違反行為】となる可能性があります。
- 「このシャンパンを入れてくれないと、もう会えない」と関係の終わりを示唆する
- 「俺のこと好きなら、このタワーを入れてくれるよね?」と好意を試す
- 実際には好意がないにもかかわらず「結婚しよう」などと伝え、高額な支払いをさせる
これまではグレーゾーンとされてきましたが、今後は警察が介入しやすくなり、ホスト個人が摘発の対象となる可能性も出てきます。
②無理な売掛の禁止
色恋営業と密接に関わるのが「売掛金」の問題です。今回の改正では、売掛金の支払いを強要する悪質な行為に対し、厳しい罰則が設けられました。
▶ 次の行為を接待飲食営業を営む者に係る禁止行為として規定(罰則あり)
• 客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫
• 威迫や誘惑による料金の支払等のための売春(海外売春を含む)、性風俗店勤務、AV出演等の要求
これに違反した場合、行為者(ホスト個人も含む)には1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科せられます。
具体的には、
- 「払えないなら風俗で働け」など、売春や性労働をあっせん・強要する言動
- 執拗な連絡や自宅への押しかけなど、威圧的な取り立て
- 暴力や脅迫を示唆する言動
などの行為が処罰の対象です。これにより、悪質な売掛金トラブルの抑止が期待されます。
③広告・宣伝の規制強化
街中の看板やSNS広告も、大きな規制の対象となります。警視庁は通達を出し、過度な競争などを煽る表現を禁止しました。
【禁止される広告表現の具体例】
- 営業成績を直接示す文言
- 例:「年間売上〇億円突破」「億超えプレイヤー」「指名数No.1」
- 成績上位を推認させる役職名
- 例:「総支配人」「幹部補佐」「レジェンド」
- 従業員間の競争を強調する文言
- 例:「売上バトル開催中」「ランキング制」
- 客の応援を過度にあおる文言
- 例:「〇〇を推せ!」「〇〇に溺れろ」
これらの表現は、利用者に過剰な消費を促し、高額な売掛に繋がると判断されました。今後は、よりクリーンな広告表現が求められることになります。
④スカウトバックの禁止
売掛金を支払えない客に対し、性風俗店などを紹介し、その紹介料(スカウトバック)を得る行為も明確に禁止されました。
これは風営法だけでなく、職業安定法違反にも該当する悪質な行為です。違反した場合、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という非常に重い罰則が科される可能性があります。
⑤無許可営業・名義貸しへの罰則強化
風俗営業におけるコンプライアンス違反への罰則も大幅に強化されました。
■名義貸し⇒個人への罰則が、5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金に強化
特に法人への罰金額の引き上げは、「罰金を払えば済む」という考えを許さず、適正な営業許可取得と運営を強く促すものです。
⑥不適格者の排除(連帯責任)
今回の改正で、経営者層に最も大きなインパクトを与えるのが、系列店への連帯責任の導入です。
▶ 次の者を風俗営業の許可に係る欠格事由に追加
• 親会社等(A:親法人、B:兄弟法人、及びC:子法人)が許可を取り消
された法人
• 警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
• 暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響
力を有する者
ある法人が許可を取り消された場合、その親会社・子会社・兄弟会社といったグループ全体が、取消しから5年間、新たに風俗営業の許可を取得できなくなります。
一つの店舗が重大な違反を犯して営業許可を取り消されると、そのホストグループ全体の事業展開が長期間にわたって停止してしまうリスクを負うことに。警察の調査後の「処分逃れの営業許可返納」もできなくなり、コンプライアンス遵守の重要性がこれまで以上に高まっています。
法改正による影響と変化
今回の法改正は、ホストクラブ業界にどのような変化があるでしょうか。
1. コンプライアンス遵守の徹底
店舗側は、従業員一人ひとりに対する法改正の教育が必要となります。何が違反行為にあたるのかを正確に伝え、店舗独自のルールを整理するなど、違反を起こさせないための仕組みづくりが不可欠です。
2. 広告・集客方法の転換
売上至上主義など、煽るような広告が使えなくなるため、業界は新しいブランディング戦略を模索することになります。ホスト個人の人間性やエンターテイナーとしての魅力を伝える、より本質的な情報発信が主流になっていくでしょう。
3. 利用者との関係性の変化
利用者にとっては、悪質な営業や高額請求のリスクが減り、より安心してサービスを利用できる環境が期待されます。トラブルを避けるためには、利用者側も店の料金体系をしっかり確認し、無理のない範囲で楽しむという意識がより一層重要になるでしょう。
まとめ
2025年の風営法改正は、ホストクラブ業界にとって大きな転換点です。
これまでの過剰な営業スタイルは淘汰され、業界全体の健全化が促進されることになります。
この法改正は、そこで働く人々だけでなく、サービスを利用する人々、そして社会全体にとっても、より安全で透明性の高い業界へと変わっていくための重要な一歩と言えるでしょう。
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